ランナーの踵の減りに想う事
河川敷では色んなランナーにすれ違う。
街中を車で走っている時も、ジョギングをしている人をよく見かける。
その人が誰で、どれくらいの走力がある人か全く知らなくても、競技者かジョガーかはすぐわかる。
それは、スピードの違いではない。
競技者がゆっくり走っていても、ジョガーが速く走っていても、明確な差がある。
それは、着地の仕方にある。
踵からとか、つま先からとか、そういった話ではない。
膝から下の振りだし動作があるか、無いかである。
競技者のほぼ9割以上には、着地の直前に前に振り出す動きが無い。
地面に着いてから、前に振り戻されてきた足を、そのまま真下に下ろす。
空き缶を足で踏み潰すような、地面を押す動きで、支持脚に乗る。
地面の反発力返した足を、出来るだけ流れないように巻き取って、また下ろす。
この繰り返し。
単純化すれば、足は上から下へ下ろすだけなので、踵の一部分がすり減るということはない。
触れて擦れる程度で、少しずつ角が取れて丸くなる程度。
一方、ジョガーは着地の直前に膝から下を前方に振り出す動作が入る。
この動きで踵を前に蹴るから、踵が減る。
それも局所的に鋭く削れる。
歩く時にも踵を擦って歩く人がいるが、走る時にも全く同じことをしているわけだ。
空き缶を踏み潰す動作とは、全くベクトルが異なる。
「走るのが苦手だ」という人や、「スピードが出ない」という場合、膝から下を前に振り出す動きをしていなケースは、ほぼ無い。
膝下を前方に振り出す動きは、最も理に適っていない走り方。
体の構造に合っていないから、筋肉も骨格も連動しない。
この地球上で働く重力や、慣性の法則に逆らった走り方だ。
そんな逆らった走り方をしているランナーは、おそらく全ランニング人口の、95%以上を占めると考えられる。
試しにその動きで少し走ってみたら、100mも走れなかった。
太ももの前が張りつめておかしくなりそうで、異常に苦しかった。
これではスピードが出ないし、苦しいのも当然だと、身を持って感じた。
まさに、苦行に近い。
僕自身大したスピードを持っているわけでもないし、距離には相変わらず弱い。
より自然体で、理に適った体の使い方は常に研究中だ。
試行錯誤の途中なので、日頃走り方に口出しすることはあまりない。
ただ、整体師として、多くのランナーの動きを分析すると見えることが、結構ある。
ランニングを本当の意味で分かるコーチは数少ないし、走る整体師とか、走る治療家と名乗る人間のほとんどは、何も分かっていない嘘っぱちだ。
それは、解決策がわからないのではなくて、問題がわかっていないのだ。
膝から下は一切振り出さずに、空き缶を踏み潰すかの如く真下に下ろす。
これだけで、随分楽に走れるはずだ。
あなたに足りないのは根性や精神力ではない。
余計な動作を辞めることだ。