師走の猫
段々と寒くなるこの季節。
寒さは敵という見方もできるけれど、寒さだって無くてはならない。
四季というものが無くなれば、日本人はこの地で生きていくことすらままならないだろう。
いくら寒くても、春には冬が必要なのだ。
だから、冬には冬の仕事を体にさせてあげよう。
冬は、春に向けて、その先へ向けて体を作る大事な季節。
なーんて、言っても寒いものは寒い。
そんな時に、猫は居心地の良い所を知っている。
日向ぼっこして、丸くなって、時々背伸びして、気持ちよさそうにしている。
「いいなぁお前。俺も猫になりたい」
学生の頃、朝家を出る時に何度そう思ったことだろう。
そのしなやかな身のこなし、漂う穏やかで幸せなオーラ、温かさ。
犬よりも、僕は圧倒的に猫が好きだ。
猫を見ていると、年がら年中同じサイクルの生活をしていない。
起きる時間、寝る時間、寝る場所、散歩する場所、遊ぶ場所、全部変えている。
意図してか、本能かわからないけれど、季節で変えている。
人間と違うのは、それをササッとやることだ。
身軽だから、しがらみなどなく、どこにも執着しない。
修正が速い、微調整が速い。
絶えず、止まらず、長されず自分で判断している。
猫のくせに。
猫のくせに。
これが、しなやかさというものなのだろう。
そう考えると、ニンゲンは、どれだけ多くのモノに縛られれているだろう。
考え方、思い込み、恐怖、人間関係、借金、ローン、それから動かない関節と筋肉。
猫からしてみれば、わざわざ自分で苦しい方を選んでいるように見えるのかもしれない。
窓際で、縁側で、陽の光を浴びながら丸く、時に伸びて、
「こっちの方が楽でいいわ」と見せつけてくるようにも思える。
何も発しないで、姿で表してくる。
12月になった、やれ今年も1カ月だ。
忙しい、忙しいと走るニンゲンを、今日も猫はあざ笑うのかもしれない。
いつの日か、「ニンゲンていいね。僕も2足で歩いてみたい」と言わせてみたいものである。
猫には歯が立たない。