4月1日のトラフィック
年度の区切りという習慣から離れて、しばらく経つ。
年度末にはそわそわして、新年度には環境が変わり、
4月になった途端になかなか過ぎていかない時間。
年度の節目には、そんなイメージがある。
今ではもう、年度って、自分には直接関係ないな。
そう思っていた。
いつもと同じように目が覚めて、
同じように朝のロードワークに出掛ける。
上下のウェアが暑い。
暴れる髪を抑えるために被っているニット帽が、余計に体温をこもらせる。
明日から、下はショートパンツでいいな。
そんな事を考えながら、走り続ける。
走り出してから、今日は何かが違うと感じていた。
でも、何が違うかわからない。
鼻で息を吸うと、脳までツーンと痛い真冬の空気はそこにはない。
道路の脇からは雑草が芽吹き、地球征服を企んで刻一刻と細胞分裂をしている。
柔らかくて、ちょっとひんやりして、それでいて新しい匂いのする空気がある。
景色はいつも通りなのに、一体何が違うのか。
15分ぐらい走って、ようやく気が付いた。
走る車の量、走り方、それから乗っている人の顔つきが違う。
みんな、何だか堅そうだ。
車のガラスや鉄のボディを貫通して、通勤する人達の期待と不安が、
国道150号線に渦巻いているようだった。
年度と関係無い身分になった僕も、
独特な空気に触れて、気分一新して身が引き締まるようだった。
仕事を始める前に、いつもと同じようにラジオを流しながら、掃除をする。
そこで道路交通情報センターの赤井さんが伝えてくれたのは、
県内各地で立て続けに起こった事故と渋滞の情報だった。
慣れない道を運転したり、
遅刻しそうで焦ったり、
緊張してハンドル操作を誤ったのだろうか。
それとも、連日の疲れで、ウトウトしたのか。
何だかいつもと違う空気は、人の緊張そのものだった
新生活は、慣れるまで大変だ。
慣れるしかない。
人間観察と交通情報が結びついた、朝のロードワークだった。