そろそろ、ヴェイパーフライの話をしようじゃないか④
おかげ様で、ヴェイパーフライシリーズ、大反響を頂いております。
ありがとうございます!!
そろそろ、ヴェイパーフライの話をしようじゃないか①
そろそろ、ヴェイパーフライの話をしようじゃないか②
そろそろ、ヴェイパーフライの話をしようじゃないか③
今日は第4話。
ヴェイパーフライは、「カーボンプレート」という言葉とセットになっていると言ってもいい。
カーボンプレートが極めて重要な役割を果たしている事は確かだ。
ソールの素材「ズームX」も、
カーボンプレートと両輪をなして、
ヴェイパーフライの独自性を支えている。
今日は、そのズームXについて、もう少し掘り下げてみたい。
ズームXの特徴は、エネルギーリターンが大きいことだ。
とてもよく弾む。
押し返された分の反力を、少ないロスで返すことができる。
それでいて、非常に柔らかく、軽量である。
従来のソールの素材は、
押し曲げから戻る反発を強くすることと、
地面からの跳ね返りを強くするために、硬いものが使われてきた。
ズームXと薄底マラソンシューズの材質は、対極と言ってもいい。
ズームXのエネルギーリターンが大きいのは、高発泡だから。
それも、ほとんど空気と言ってもいいぐらい、
空気を含み、閉じ込めた材質になっている。
軽量かつ、リターンロスが少ない。
スポンジというか、シフォンケーキというか、そんなイメージ。
スポンジやシフォンケーキと違うのは、押しつぶしても空気が抜けない所だ。
抜けない空気は押されたら元の圧力に戻ろうとするから、反力が生まれる。
ナイキはエアーを使うのが本当に上手い。
構造にかなり隔たりはあるけれど、
バランスボールがよく弾むのと原理は同じだ。
バランスボールは巨大な1つのスペースに空気が入っている。
ズームXは、小さな部屋に空気を閉じ込めた物の、集合体。
ズームXは軽量かつ、エネルギーリターンも大きいが、構造のほとんどが空気のため、
繰り返し衝撃を受けて返すと、次第に構造が崩れてくる。
高発泡素材の短所である。
マラソンシューズとして、
レースを走り切れるだけの耐久性、
着地のエネルギーリターン、
軽量化のバランスが、最も取れるズームXの量が、
結果的に「厚さ」になったものと考えられる。
地面からのエネルギーリターンが大きいほど、転がりは加速する。
足は蹴って進むのではなく、転がって進むようにデザインされている。
タイヤがボンボン弾むよりも、転がる方が無理がなく、
エネルギー効率が良いのは、当たり前すぎてあまり意識されていない。
タイヤが転がる様な仕組みが、体には備わっている。
転がりをガイドするのが、カーボンプレートだ。
次回は、カーボンプレートのガイドの事について書いてみようと思う。
ヴェイパーフライがドーピングシューズだとか、
反則だとかいうアンチな意見も多くある。
作用・反作用の法則で、ランナーが地面に与えたエネルギーしか返って来ないので、
動力無しにシューズが推進力を与える事は、絶対に無い。
しかし、動力を使わずに推進力を得る方法が、ひとつだけある。
圧縮した空気か、ガスを、ソールに閉じ込める方法だ。
高圧の空気を閉じ込めておけるだけの強度が、ソールにあればの話・・・
高圧になれば、ボンベのような強度の結合度が必要になるし、
着地の繰り返しの更なる圧縮に耐えなければならない。
そうなると、材質は硬くせざるを得ないだろうし、重くもなるだろう。
キプチョゲが履いていた、αーFLY、
この前足部のズームエアーは、ひょっとしたらただの空気ではなく、圧縮ガスが入っていたのでは?
ソール全体には無理でも、パーツとしてなら不可能ではない。
消防士時代の、空気呼吸器のボンベから、そんな事を推測してみた。
FRPの5リットルのボンベに、300kの圧力をかけて、1500リットルの空気を入れる。
(コンプレッサーの性能の問題もあるので、なかなか満タンにはならない)
このボンベの空気を使うと、車や列車も持ち上がる。
空気って凄いのだ。
長くなったので、ここまで。
カーボンプレートは次回に、続く。