踵の減りと坐骨神経
シューズがボロボロになって、新しいのを買ったのに、未だに履き心地が忘れられずにボロボロのものを週の半分は履き続けている。
おそらく、1500kmくらいは履き込んでいる。
2月から2足で履き回してきたので、大よその計算でそれ位の距離になる。
随分とフニャフニャにはなったけれど、機能面での落ちは少ない。
唯一、濡れた路面では全くグリップが利かないという点だけで、これは気を付ければカバーできる話だ。
夕方の風に当たりながら、汗で濡れていたのが乾いたか確かめながら、靴底を見る。
前足部はえぐれているけれど、このすり減ったラバーとアスファルトの食いつきがまた絶妙なのだ。
前足部は蹴り出しの時にしなって擦れるので、どうしても減ってしまう。
でも、踵はほぼ購入時のままで、細かな模様もそのまま残っている。
ちなみに、踵は着地の時にちゃんと着いている。
踵の外側部から股関節外旋位で、フラットに近い形で着くのが現在のベスト。
故障も皆無であり、練習量が増えてもガタが来ない。
踵からの着地でも踵を減らさないというのは、こだわりがある。
以前は踵をほとんど着かずに走っていた時期が数年間あった。
スピードは出たけれど、距離に弱かった。
スピードは出るけれど、加速する程に足裏に血豆が出来て苦痛だった。
フルマラソンを走るには、走り方を変える必要があった。
スピードを落とさずに距離を踏めて、血豆のできない着地が必要だった。
そこできっちり踵をつけて、バネで蹴るのではなく重心移動で走る形にシフトした。
ところが、そこで大きな躓きがあった。
左の股関節、もっと言えば中殿筋や大転子、仙骨周辺に炎症と神経痛が起こり、走れてはいるけれど苦痛を伴う状況になったことがあった。
いわゆる、坐骨神経痛や梨状筋症候群にも分類される症状だった。
左の臀部に太い釘が刺さるように感じることもあった。
大転子にある転子滑液包にも炎症が起こり、横向きで寝るのも辛かった。
実は初フルマラソンは、そんなコンディションの中で走ったレースだった。
初フル2時間48分の間の半分は、神経痛との戦いだった。
それだけ苦しめば、原因をどうしても究明しなければならない。
色々試行錯誤の末にたどり着いたのが、股関節外旋筋群のエキセントリック収縮による微損傷の蓄積、それに伴う筋力の脆弱化だった。
股関節外旋筋群は中殿筋やハムストリングスにも筋連結があるので、不具合を波及させたり放散痛もあった。
エキセントリック収縮とは、筋肉が収縮しながらも伸ばされる状態を指す。
一番筋肉に刺激を入れることが出来る反面、ダメージが大きく回復に時間が掛かる。
ランニング動作においては、エキセントリック収縮は極めて相性が良くない。
踵から着地した際に、そこを支点にして股関節に内旋動作が入ると、外旋筋群が引き伸ばされる。
外旋筋群に大した筋力は無いので、繰り返し引き伸ばされるエキセントリック収縮が起これば、負荷に耐えられなくなり炎症や神経痛を起こす。
足の外側部で着地してから、動くはずのない踵が内旋動作を伴ってズレる動きをする。
これがランナーの臀部痛、坐骨神経痛を伴う症状に共通することを発見した。
着地してからも踵がずれるので、局所的にそこだけが減っていく。
当時の僕のシューズも、踵の一部がよくすり減っていた。
本来、ランニングシューズの踵は、擦り減るはずのないものなのだ。
一番初めに地面に置かれるだけで、後は動かないから、減る余地が無い。
それから、踵を支点にしたローリングのような力が働かないように気を付けるようになった。
股関節外旋位で着地する時も、重心は移動しても足裏はズレることのないようにしている。
踵を支点としたローリング動作を起こす原因は、着地の角度やインソール、シューズの構造やフォームなど多岐にわたる。
ただ、これが一番怪しいというのは、着地時の力みだ。
膝から下、特に足部に力が入ると柔らかな着地にならない。
力んだ足は硬くなって、地面を捉えられずに転がるようになる。
脱力してベタッと足がつく状態なら、柔らかく、ズレることなく着地から離地ができる。
不要な力みが、股関節外旋筋群、中殿筋にまで悪影響を与えるという、いい教訓になった。
膝から下は、フニャフニャで、足のもつ弾力を殺さない使い方をしたいもの。
シューズの踵の減りと、臀部痛、神経痛との機序。
そこまでたどり着くには、苦しんだっけなぁ…
それじゃあ、また!