まさか泣くとは思はざりけり
整体に足しげく通ってくれた高校球児たちのプレーを一目見ようと、今日は暑い中でとある球場に向かった。
3年生にとっては最後の大会になるので、一度は観ておきたかったのだ。
初戦は突破したけれど、2回戦も手ごわい相手で優勝候補でもある。
そんな相手に、点差をつけられて負けはしたものの、押し切らせないプレーを見せてもらった。
崩れない守りに、俊足強打の相手チームがひるむ程だった。
リードされながらも、引導は渡さないという試合運びは、よく鍛えられたチームでしかできない。
グランドに立って、選手が頼もしくプレーする姿に、感動した。
それも、4イニング位で涙があふれてきて、最終回まで止まらなかった。
持って行ったタオルは汗よりも、涙と止まらない鼻水で重くなった。
何度も何度も整体に通ってくれた選手たちが、活き活きとプレーする姿を見るだけで、何とも言い表せない気持ちになった。
サングラスをしていって、本当に良かった。
念のために言っておくと、応援しに行った高校は僕の母校でも何でもない。
正確には僕の母校は統廃合で無くなってしまった。
初めて応援に行った試合でまさか、自分が泣くなんて、思ってもみなかった。
その話を奥さんにしたら、「涙腺がゆるくなるのは、おっさんだよ」という何ともショックな言葉が返って来た。
毎日毎日カラダを酷使して、なかなか休まらないスポーツ選手の施術は、正直言って難しい。
時間もかかる、回数も要るし、次から次へと問題が起こり、外傷も起こる。
治療家が一番やりたがらないのがスポーツ選手なのだ。
そして、スポーツ選手もまた、治療家に理解されない苦しみがある。
僕も現役時代はカラダのことで、かなり苦しい時期を過ごしたこともあった。
これは、経験した人間にしかわからない、本当に切実なものなのだ。
だからこそ僕はなんとかしてカラダを変えようと覚悟を決めたし、自分にできることを総動員して向き合ってきた。
そんな中で、一番変えてもらったのは、僕の方だったと思う。
本当に多くのことを学ばせてもらった。
これで3年生は引退する。
野球から離れれば、整体に来ることは無くなるかもしれないけれど、これから先にまた彼らに必要とされるタイミングがあった時に、頼りにされる存在で有り続けたい。
そのために、勉強と研究の手を緩めることはできない。
もっと自分がチカラになれることはあったんじゃないか、
まだ自分にやれることはあるんじゃないか。
頼もしくプレーする球児の姿を見て嬉しく思いながらも、これから先にやらなければいけないことも見えてきた。
高校野球はこれで終わりだけれど、彼らにはこれから先、あらゆることで活躍して欲しい。
三十路手前にして、既に涙腺がユルユルのムラタでした。