焦らずじっくりが鉄則

発芽した種が、夕方にはもう双葉になる位に、この季節の植物の成長は早い。
豊かな日差しと、適度な気温が成長を促しているのだと思う。
たった一粒の種が大きく育っていく様子からは、そこに秘められた生命力の強さを感じる。
毎日が真夏日になる頃には、びっしりと茂っているだろう緑のカーテンも、一朝一夕に出来上がるものではない。
いくら成長が早いと言っても、1日に1ミリ~数ミリの単位で絶えず変化し続けた結果だ。
情報化が進み、TVでもネットでも手軽に何でも見聞きできるようになった昨今、少しづつの変化を積み重ねる価値というものが軽くなってしまったようだ。
手間暇かけて何かを作る、じっくり時間をかけて成熟させる、仕込んだら待つ、段階を踏んで形成していく。
そんな過程をすっ飛ばして、手軽に結果だけ求めようとする、横着体質が進んでいるように感じる。
そういった方向性に考えが進んでいくと、どこまででもハウツー、テクニックを求めて漂流人生が始まる。
残念ながら、ランナーにもそういう流れはあって、モノ(シューズやウェア、サプリメント)で何とかしようとする人は後を絶たない。
メーカーも良いものよりも売れるものを作る、利益追求体制のマーケティングを進めている。
ビジネスだから、利益追求は当たり前。
しかし、顧客の生き方が本当に豊かになっているかどうかは、随分怪しい。
本質的な所は、モノもテクニックも、活かす力がなければ意味を成さないということだ。
その活かす力は、種が芽を吹いて根を張るようにしか培われない。
特に自分を見失っている時、何のためにが無い時は、人は根無し草になりがちだ。
蒔かぬ種は生えぬ。
実だけもぎ取ろうとするのではなく、種から蒔く。
何なら、土から作る。
何でも手軽にポチッと買える時代だからこそ、そんな泥臭いものの価値が上がってきている。