メシマズの3年修行
料理のあまりお上手でない嫁のことを、「メシマズ嫁」と呼ぶワードが世に出て久しい。
インパクトかつ心情をダイレクトに表したこの言葉は、今後も死語となることはないだろう。
うちの奥さんの飯は、美味い。
お世辞でも自慢でもなく、素直に美味いと思う。
僕のカラダも奥さんの作る料理に支えられて、仕事もマラソンにも打ち込めている。
子どもの食べっぷりも凄まじい。
しかしながら、結婚当初は奥さんの料理の腕は相当怪しかった。
車で言うなら仮免許の試験で落ちそうだった。
そこで、料理の基本を徹底的に教え込んだ。
・ご飯が炊けること
・味噌汁を作れること
この2つが「できる」だけで日々の料理には困ることは無くなる。
ご飯があって、味噌汁があって、もう一品肉や魚があって、余裕があれば付け合わせで和えものやおひたし、サラダがあれば十分。
肉や魚に替えて煮物でもいい。
意外にも、料理に困る人に共通するのが、味噌汁をまともに作ることができないということ。
味噌汁作りには、様々な基礎が含まれている。
・水を張る(全体の必要量、具材とのバランス)
・ダシの味がわかること
・具材の切り方(包丁さばき、繊維の方向、具材を活かす切り方)
・味噌の分量、タイミング
手際よく食材を切り刻んでいかないと、水が沸いていく間に煮ることができない。
ご飯が炊ける時間の半分以内で味噌汁作りを完了しないと、もう一品まで手が回らない。
ダシの味がわかれば、味噌の味も決まる。
塩加減がわかれば、すまし汁もスープも作れる。
そこまでいけば、醤油と酒とみりんの割合を変えることで煮物が作れる。
煮物は食材の繊維の向き、断面積が大事。
それも、味噌汁作りで切り方をわかっておけばわけはない。
切り方ができれば、炒める・焼く揚げるのは、誰でもできる。
味噌汁の味つけができれば、塩、醤油、味噌、酒、みりんで何でも作れてしまう。
あとは、相性のいい具材の組み合わせ、旬の野菜や好みで、レパートリーは無限に増やすことができる。
そんなことを見通して、結婚当初には奥さんに手取足取り教え込んだ。
最初はたどたどしかったものも、いつの頃からか迷いなく作るようになった。
結婚5年目の今では、全部任せている。
奥さんも僕も、料理のことで文句を言うことなんて無い。
基本があるおかげで、毎度の夕飯作りも楽しそうだ。
まだ教えていないのは、魚の捌き方。
これは魚の骨格をわかっていないとできない。
刺身までできるようになったら、僕の出番は無くなりそうだ。
「基本⇔発展⇔応用」
この図式、料理も整体も陸上も、ぜーんぶ同じ。