富士登山駅伝5区振り返り【前編】
もう遠い昔のように感じる富士登山駅伝。
つい4日前の事だというのに、終わってしまうとあっという間だ。
ここで、自分の担当した5・7区について振り返っておきたい。
「行ける気がしねぇ・・・」
富士登山駅伝の11区間のうち、4区の襷を待っている間、
思った以上に集中力が上がっていないことに気が付き、焦りを感じた。
自分の担当する5区は4.24kmで1017mを登る(2085m→3102m)。
低酸素下で急傾斜かつ、足場を取られる砂地。
全区間の中で、最も大きな標高差をクリアしなければならない。
この区間だけで、チームの明暗が分かれると言ってもいい。
ここで5分、10分の差がひっくり返り、
力のあるチームは後続との差を確固たるものに広げる。
昨年、初めて5区を走った時のタイムは49’06”で区間3位。
17位でもらった襷を11位まで上げた。
今年は昨年の反省を活かして、身体作り磨きをかけてきたので、
区間賞も獲れる手応えを感じていた。
しかし、アップをしていても、着替えてシューズを履き替えても、
どうにもこうにも戦闘モードに体が切り替わって来ない。
出来る準備は全てしてきたし、試走のタイムは昨年よりもいい。
にも関わらず、緊張が高まって来ないことで、不安を感じるようになった。
緊張は、すればする程良い。
緊張をすることが、集中力を最大限まで高めてくれる。
緊張する程、頭も冴える、冷静に熱くなれる。
何事もセンスの欠片も無い僕の唯一の武器は、
本番の勝負強さと集中力の高さ。
これだけで、今までの人生の勝負どころを全て突破してきた。
兄弟チームの清水RCがスタートしてから約6分後、
スパートをしながら最後の坂を登って来る後輩の姿が見えた。
先頭の通過から数えると、一般の部も自衛隊の部合わせて十数チームが中継点を通過していた。
次々と通過して行く他チームを見ながら、数分の間に一気に集中力が高まって来た。
「10番!!」係員のアナウンスでチームのナンバーを呼ばれると、
中継点でスタンバイが出来る。
もう少し、もう少し。
見えていても、なかなか登りきれない坂を、
後輩が最後の力を振り絞って走って来る。
1区から4区までの仲間が流した汗を吸って、
ズッシリと重くなった襷を受け取ると、
その瞬間一気に全身が覚醒して、集中力が最高潮に達した。
「みんな、待ってろよ!!!」
自分の仕事は、必死に襷をつないでくれた仲間が作った時間を守る事、
襷を待っている仲間に、少しでも貯金を作って襷を渡す事。
自分のためには頑張れないが、人のためなら犠牲になれる。
「先に出たチーム、全部抜いてやる!!!」
緻密に練り上げた戦術を駆使すべく、4.24kmで1017mを登る5区がスタートした。
続きはまた。