ガス交換コントロール
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かれこれ十数年前の話になる。
まだ野球がメインで、インターバル走や駅伝は、
体力強化の一環としか考えていなかった頃。
トラックを走っていて、一番キツイと感じるのは、呼吸だった。
長時間の練習と、常軌を逸した軍隊のようなトレーニングのおかげで、
距離を走っても脚がキツイと思うことはあまりなかった。
ダッシュもトップスピードで何本もできた。
呼吸さえ何とかなればなぁ…と、その強化に取り組み始めて、記録が伸びた。
ただの野球部員が1回90分の駅伝の練習会を週2回、2カ月間続けて、
5000mのタイムが17’30”→16’29”に、3000mは9’29”になった。
今ではいつでも走れるタイムでも、当時は劇的な変化だった。
この時の伸びが無ければ、今のチームに拾われる事も無かっただろう。
呼吸コントロールの研究は、今も続いている。
昨年ある本で、潜在的な身体能力を呼び覚ますために、
速い呼吸と息止めを繰り返す方法を実践している人物が居る事を知った。
かなり変わり者ではあるが、理に適った方法であるし、結果も出している。
ひょっとしたら、息止めが長くできる事は、
低酸素の環境で走る際に、アドバンテージになるのではないかという、閃きが起きた。
血中酸素飽和度が低くても、脳がその状態に順応し、体もそれに慣れれば、
スピードやパワーの低下が起こりにくくなるかもしれない。
本には、速い呼吸を繰り返し、血中酸素飽和度を限界まで上げ、
二酸化炭素濃度をギリギリまで下げてから、
胸いっぱい息を吸ってから始める息止めと、
速い呼吸の最後の一息で息を吐き切り、
肺から空気を出し切ってから始める息止めが載っていた。
どちらも、自律神経や運動神経に強く作用し、短時間のうちに身体機能に変化が現れる。
重くて持ち上がらないものも、血中酸素飽和度を上げて二酸化炭素濃度を下げ、
息を止めてからトライすると、いとも簡単に持ち上がったりする。
また、息止め自体も、短時間にどんどん長くなっていく。
3分→3分30秒→4分ぐらいの変化は、1回のトライで起こる。
心臓血管系や脳神経系に働きかけるこの方法は、
身体機能開発に無限の可能性を持っている反面、危険性もある。
人間は、入ってくる酸素と使う酸素、
入れ替わる二酸化炭素の供給バランスが崩れると、途端に息苦しさやめまいを感じる。
この反応は、極めて急速である。
体で感じる息苦しさに加えて、精神的にもパニック状態に陥る。
頭で考える余裕が無くなる。
命の危機なので、当然である。
この供給バランスを監視するセンサーの感度は、実はかなり幅が持たせてある。
例えてみると、まだ全然距離があるのに、警告が鳴るバックモニターのようなものだ。
速い呼吸と息止めを繰り返すと、警告が鳴るタイミングを遅らせることが出来る。
呼吸のコントロールは、あらゆるスポーツに有効なだけでなく、
集中力を高めたり、リラクゼーションの効果もある。
この辺りの突っ込んだ話については、また後日追記したいと思う。