走りの基礎理論

競技として陸上長距離のレースに出るようになって10年以上経つ。
この間、一度も指導者に教わった事がない。
練習のほとんどは、いつも1人だ。
でも、練習に困ったことはない。
いつも1人でやっているので、時々大学生にお呼ばれしたり、どこかの練習会に行って走ると、同じペースが楽に感じる。
練習に困らないのは、教育学部時代に学んだ運動生理学や、解剖学、運動学、バイオメカニクスやトレーニングの基礎理論、栄養学等の基礎理論があったから。
それらを応用して、実践と試行錯誤を重ねてきた。
応用するために基礎理論を吸収するという視点で聴くと、すんなり頭に入ってきた。
人間、たくらむとスイッチが入るものである。
自分のカラダに何を起こしたいのか、今何が起こっているのか、次はどうするか?
そんなことを次々考えながら、分析を重ねてきた10年。
圧倒的にひとりぼっちで練習することが多いせいで、僕のマラソン・陸上を通した人間関係の広がりは、かなり小さい。
明らかに長距離ランナー向けではない体質の僕も、それなりに適応しつつ競技を続けている。
カラダの仕組みに沿って鍛えれば、人間は必ず適応する。
振り返ってみれば、人間の仕組みを検証、解明してきたような10年でもあった気がする。
スポーツにおける生理学的運動理論は、実はもう何十年も前に完成していて、今後どれだけスポーツ科学や医学が発展しても、「リディアード理論」の二番煎じにしか過ぎない。
リディアード理論を応用すれば、短距離走から長距離走はもちろんのこと、全てのスポーツのパフォーマンス向上ができる。
アーサー・リディアードのすごい所は、精密な計測機器や運動生理学がまだ十分に発達していない何十年も昔に、経験則から完璧な理論を導き出した点である。
やれることを全部試して、あらゆることをやってみて、人間のカラダの仕組みを解明してできたのが「リディアード理論」だ。
僕がひとりで練習をしてこれたのも、リディアードのランニングバイブルという道標があったからだ。
先人の知恵が、ここにある。
ただし、中学生でも読める平易な文章でありながら、理解できる人間が少ない。
無駄な言葉が少しもない分、1つの言葉を拾い損なうと、誤解につながる。
方法論は載っていない。
原理原則だけが書いてある。
前回の東京オリンピック(1964年、昭和39年)の頃から既にリディアードの門下生達は世界の中長距離を席巻してきた。
あまり知られていないことだけれど、1964年当時の記録でも、今の世界最高レベルと遜色ない記録を残してきた。
リディアード理論は、子供からお年寄りにまで全ての人に当てはまる「法則」と言ってもいいかもしれない。
僕もコーチを務める「走生塾」では、リディアードのランニングバイブルを教科書にしている。
明日の午後は座学。
基礎理論が分かれば、走ることはもっと面白くなる。