第44回富士登山駅伝・振り返り③7区
5区から山頂折り返しの6区へ、一般の部トップでタスキが渡った。
2位とは2分42秒の差がある。
しかし、油断はできない。
2位のチームは、6区に大砲を置いている。
ここで順位が入れ替わる事は、想定の範囲内。
むしろ、監督の作戦でもあった。
下りに入れば、山区間でも差は開かない。
6区、7区、8区を、アクシデント無く切り抜ければ、
後追いでもロード区間(9・10・11区)で逆転できる。
無理に追って、転倒してタスキが繋がらなく位なら、
見える範囲で安全についていけば、最後は勝てる。
それがチームの作戦だった。
5区で貯金をかなり削ってしまい、
後の区間に負担を強いる事になった事を、
6区の細野さんが山頂から折り返してくる間、ずっと申し訳ないと思っていた。
タスキを渡してから、徐々に体の自由が利くようになってきた。
脚が痙攣したり、目がチカチカするような不調も消えた。
膝から下に被った砂埃をふき取り、捻挫防止用にテーピングで足首を保護する。
シューズを登り用の薄くて軽いものから、下り用の「X-TALON200(廃版)」に履き替え。
転倒時の保護のためにワークマンの99円のゴム手袋をはめて、下りの7区に備える。
路面がよく見えるように、サングラスは外してスタッフに渡した。
7.5合目の砂走館から上を見ると、これから山頂を目指すチームのすき間を縫って、
自衛隊の部のトップチーム、滝ケ原が降りてくるのが見えた。
そこからしばらく間が空いて、後続の自衛隊の部が数チーム通過していく。
来い、来い、来い、来い、、、、
そう呟きながら、山頂方向を見ていると、一般の部の黄色のゼッケンの選手が見えた。
ゼッケン1番をつけたトヨタの選手だった。
その後方、十数メートル差で、オレンジのユニホームの細野さんが付いている。
5区の失敗を挽回する、最高のチャンスだった。
危険で苦手だった下りの7区も、今年は全く怖く感じない事を、試走で確認していた。
自分の中で、集中力が一気に高まったのを感じた。
トヨタスポーツマンクラブが、トップで7区にタスキをつないだ。
横で待機していた兄弟チーム、見次クラブの5・7区の山の神が、
「大将!見せ場だねぇ!!!」と煽る。
山の神は、7区のスペシャリスト。
ブッ込んで、逆転してみろという意味に他ならない。
トヨタ通過から十数秒後、細野さんが見えてきた。
「焦るな!!焦るなよ!!」
細野さんは、確かにそう言っていた。
トヨタとの差は、14秒。
焦って転べば、大怪我するのが山岳区間の下り。
でも、14秒差を、追わないって、、、無いな。
それに、登りを挽回できるチャンスなのだ。
山の神なりのエールももらってるし・・・
心は火が着いて熱いのに、自分を空から俯瞰して視ているかの如く、頭は冷静だった。
岩がゴロゴロ転がっている急斜面も、一切恐怖を感じない。
完全に集中できているのを感じた。
「引っくり返してやる」
ただただ、前を追った。
今思えば、僕は岩がゴロゴロした路面を全く見ずに、
前を行く選手の背中だけしか見ていなかった。
差が徐々に詰まっているのは分かったけれど、もう少しの距離が詰まり切らない。
相手も必死なのが、後ろ姿で分かった。
最終的に、14秒あった差は、8秒に縮まり、8区の高瀬のアニキに繋ぐことができた。
7区(3.66km・1017m下り)のタイムは、8分24秒で区間6位。
この差なら、逆転してくれる。
タスキを受け取ってから、猛スピードで下って行く高瀬のアニキの背中を見送った。
7区は平均傾斜27%で、前半はゴロゴロと岩が点在した危険地帯を、クリアしなければならない。
2017年の7区は、10’02”(区間34位)
2018年の7区は、9’02”(区間7位)
2019年の7区は、8’24”(区間6位)
3回目の挑戦で、随分と縮まった。
5区はタイム落としたけれど、7区とのタイムを合算したら、昨年よりも速くなっている。
X-TALON200(廃版)のおかげで、難易度の高い下りを、安全に攻める事が出来た。
ペラッペラで、サポートが無い分、尖った岩の突き上げに当たるとかなり痛いけれど、
地面の感触を捉えやすくて、高いラグがクッションになり、下りのフィーリングはピカイチ。
ラグがしなって粘るので、ブレーキかけがちな急な下りも、リラックスして下れる。
アッパーの作りも僕の足に合っていて、どんだけ長く急な下りを下っても、つま先が痛くならない。
他のシューズだったら、転んだり、攻めきれなかったかもしれない。
サポートが無い構造で、敬遠されがちなinov-8だけれど、僕は好きだな。
inov-8日本代理店のデサントさん、サポート契約してくれないかな?
今回の富士登山駅伝は、何度も書いている通り、
スタッフ、メンバーに助けてもらいっぱなしだった。
チームに恵まれたことを、本当に嬉しく思う。
大の大人が、泣きながら喜び合って、笑いながら涙を流す。
こんなむさ苦しい、オッサンたちが!!笑
清水ランニングクラブ、見次クラブは、最高のチーム。
陸上部上がりではない僕を、ゼロから経験積ませて、育ててくれた。
次の大会でも、もし自分を必要としてくれるのなら、
出来る準備をやり尽して、もう一度5区・7区を走りたい。
そして、やるからには、2区間での区間賞を獲って、連覇に貢献したい。
以上、第44回富士登山駅伝レポートシリーズでした。
大会役員、自衛隊、全参加チーム、応援して下さった方々、ありがとうございました。