登りの壁を押し上げる
アップダウンのあるコースを走るのが得意だと、
自分でも思っているし、
どうやったらもっとその力を伸ばせるか考えている。
ポイントは3つ。
①技術的なもの
②筋力的なもの
③生理学的なもの
①と②は重なる部分が多い。
体に掛かる負荷をどう推進力に変えながら、慣性を失わずにリズムを保つか。
それが結果的に脚力をアシストし、最後まで動く脚を導いてくれる。
全身を使いながら、呼吸でリズムを保つのがポイント。
③が基礎になるところ。
体の器の大きさ。
距離に耐えられるか、
スピードに耐えられるか、
衝撃に耐えられるか、
酸素負債に耐えられるか。
酸素負債を返せるか。
乳酸性作業閾値(LT)はトラックやマラソンで使われる生理学的指標の一つ。
「血液中の乳酸の値が急激に上がり出すペース」と表されることが多い。
ランナー向けの表現ね。
乳酸は酸素負債(供給と消費が釣り合わない)を負うペースまで、スピードが上がると発生する。
糖を酸素と結び付けて、エネルギーとして代謝しやすく分解したものが乳酸だ。
酸素負債を負うと血中に乳酸が発生するが、
酸素供給が再開されれば、発生した乳酸は数分から十数分で代謝される。
乳酸は糖から作られる。
LTペースは糖の消費量が多くなるポイントと言ってもいい。
人間が負える酸素負債には絶対的限界があり、その量に個人差は無い。
また乳酸の発生により血液の酸性の度合いが強くなると、筋収縮が出来なくなる。
LTペースを押し上げていくことが、
より速く走り続けるためには必要なステップとされている。
登りを走る時にもLTというのは非常に重要。
登りは酸素消費が増えるので、ペースが遅くても酸素負債が発生しやすい。
LT値が優れているというのは、
酸素供給の能力が優れていると言い換えることが出来る。
LT値を改善していくには、
そこそこ速いペースで長く走り続ける、
というステップを踏まなくてはならない。
息が上がって、ゼーハーして、
脚がパンパンになる、
という登りのトレーニングをひたすら続けても、登りは速くならない。
ある所までは技術的や筋力的な改善で向上するが、そこで天井にぶつかる。
それがLTの壁だ。
LTを改善するには、
平地を走るか、
スピードの出せるアップダウンのコースを時間をかけて走るしかない。
登りのためには平地で基礎作りが必要だ。
その後、酸素負債を抱える(無酸素的)刺激を入れると、
きつかった登りや、ペースに余裕ができる。
しかし、その刺激はやればやるほど、上がるものではない。
むしろ、時間をかけて作ったLTの基礎を削っていく。
一昨年までは、そのことに気が付けなかった。
スケジュールの中盤で無酸素的な刺激を入れてから、
スピードとスタミナの融合を図るべく、
後半はタイムトライアルをすべきだったのに、
僕はレース直前まで無酸素的な刺激にこだわっていた。
無酸素的な刺激は、階段や坂、山の登りでも良いし、トラックでもOK。
登りのトレーニングは半分は平地。
4分の1は階段かトラック、
もう4分の1が傾斜のあるコースのトライアル。
というのが、段々とわかってきた。
実は4分の3までは、ロードやトラックのトレーニングと同じなのだ。
このことに気が付いたのが昨年の収穫である。