歪の計算式

からだ工房らくだの施術スペースは、広くない。
空調は、窓用の冷房専用エアコンのみ。
冬はトヨトミの小さいダルマストーブ。
中途半端な気候はセラミックヒーターで乗り切る。
暑くなりやすく冷めやすい室内は、温度管理が難しい。
かといっても、部屋はそう大きくできない。
数年後、広い場所へ移転する計画はあるが、様々な事情もあり簡単に移転できない。
温度管理が難しい理由は、壁紙・壁材のせいだろうなと、1日のほとんどの時間を過ごしていて感じていた。
吸湿性や保温性がまるで無い。
少し文句を言えば、ちょっと汚い。
いっそのこと、漆喰を塗ってしまおうかと思ったことがあった。
でも、塗っている間に仕事を休まなければならないし、漆喰が馴染むまではある程度ニオイも出るので、二の足を踏んでいた。
そんな時に、ホームセンターで材木を見ていて閃いた。
これ、薄くして貼ってやろう。
フローリング材を材木屋さんに注文して、コーティングせずに貼る。
木肌は呼吸してくれるから、湿気を吸い込んで結露しにくく、保温もできる。
夏は熱くなりにくいので、保冷もできる。
部屋の壁の角に合わせながらカットすれば、時間のある時に段々と貼って行ける。
壁を貼る正攻法ではないけれど、元の壁紙を傷つけることなく貼る方法で始めてみた。
最初はキレイに貼ることができたと思った。
ところが、室温が上がったり、湿度の変化があると、場所によっては材木が浮き始めた。
築年数が経っている建物なので、壁そのものが波打っていたり、部屋そのものが歪んでいる。
歪んでいると言っても、1ミリも歪んでいない。
0.3ミリ程度の歪みである。
その歪みに対して、真っ直ぐな板を当てると板の反発が起きる。
貼ったばかりは大丈夫に見えても、時間が経ったり、温度湿度が変わると、反発が抑えられなくなってくる。
何枚も板を組んで貼っていくと、溜まった歪が大きくなり、逃げる場所が無くなり、弱い場所に負担が掛かって剥がれてきてしまう。
浮いた板を見て、木の膨張と壁の歪み方を見て、全く歪みが無いようにはめ込んでいかないといけない。
この木の微調整がやたらとめんどくさい。
キッチリとキレイに板を組み過ぎると、膨張した時の逃げ場が無くなる。
若干の遊びを作りながら、隙間なく組むという、相容れないようなことをしなければいけなくなった。
ど素人が壁を貼ろうとすると、ハプニングに見舞われる。
それもまた、面白さでもあり、勉強になる。
遊びが無くなると、反発が逃がせなくなり、圧力の高い所や、強度の低い所が破たんするのは、からだと全く同じだ。
歪み歪みと言いながら、歪みとは実にイメージしにくく、伝わりにくい概念。
歪みとは、遊びの無い状態を言う。
正常なら、動きの幅があるものが、何らかの原因で幅が狭くなったもの。
うーん…伝わりにくい(笑)
関節に遊びを、筋肉にも動く幅を。
それから、生き方にも遊びを。
狭い考えと見方は、自分を苦しめて歪めていく。
木からもいいこと教えてもらった。
10分あれば、壁を貼る。
コツコツやって、段々と出来てきた。