そろそろ、ヴェイパーフライの話をしようじゃないか③
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ありがとうございます。
そろそろ、ヴェイパーフライの話をしようじゃないか①
そろそろ、ヴェイパーフライの話をしようじゃないか②
前回は反発の話で終わったので、今日はその続き。
従来のいわゆる薄底のマラソンシューズは、
「押し曲げられて戻る力」が、
「蹴り」の動作にプラスになるという考えの元、反発力を高める事を追究してきた。
低発砲で、密度の高い、圧縮されたような感触のソール。
密度が高い分、薄くしないと重くなる。
薄くすれば軽くはなるが、耐久性(柔らかくなってコシが抜ける)の面と、
足を保護する面ではマイナスになる。
ソールの素材、薄さ、形状のさじ加減を工夫しながら、
反発を維持しつつ軽量化を図ってきたのが薄底の歴史。
一にも二にも、曲げられて戻る力を追い求めてきたのが、ランニングシューズ開発。
だから、ヴェイパーフライが、
カーボンプレートの押し曲げと伸びで進む、というイメージを持たれるのも仕方がない。
ちなみに、密度の高い硬いEVAソールを究極まで硬くした結果、
特に短距離スパイクは、押し曲げられて戻る力の強い「プレート」を採用する所に行き着いている。
ソールに使う素材を硬くする事で、曲げられて戻る力が強くなる。
また、硬い素材は、着地の際の地面からのエネルギーリターンも、比較的良かった。
高さ5mから生卵を落としても、割れません!
という材質は、エネルギーリターンが悪いという事。
その分足には優しいが、推進力にはならない。
1mから生卵を落としたら、絶対割れます!
という材質は、5mから落としても卵が割れない材質よりも、
相対的にエネルギーリターンが良い事になる。
硬い物と硬いものが当たれば、良く跳ねる、跳ね返る。
物理的に、モノを跳ね返すには、「硬さ」がポイントだと考えられてきた。
だが、15年程前に、とんでもない事が起きた。
ランニング界ではなく、軟式野球界で。
それまで、カーボンか金属、または木製だったバットに、
ミートポイントが「柔らかい」ものが開発された。
柔らかい球を、柔らかいもので打つと、衝撃的なぐらい飛ぶのである。
中学時代に、今よりも飛ばなかった旧式の軟式球を、
木製バットで打って柵越えまで飛ばしていた自分(ちょっと自慢)。
このバットが出た時には既に高校生で、硬式野球にドップリだった。
もう数年早く開発されていたら、中学軟式で130m弾ぐらい打てたんじゃないかと、
「たられば」を想像するのである。
話が逸れかけた!!
柔らかいモノと柔らかいモノが当たると、エネルギーロスが少なく反発は相対的に強くなる。
それとシューズの話は別なんじゃないの?
と思うかもしれない。
結論だけ言うと、別ではなく同じ!
硬いモノも跳ねるが、柔らかいモノもよく跳ねる。
柔らかいモノには、2種類ある。
どちらも、生卵を高い所から落としても割れない。
違いは、「空気をどれだけ含んでいるか」という発泡率の違い。
ヴェイパーフライのズームXは、超高発泡の素材で、空気をふんだんに含んでいる。
緩衝材のαゲルは、ほとんど空気を含まない。
従来の薄底のマラソンシューズは、押し曲げに対して戻る反発を、強くようと開発されてきた。
硬い素材は、地面からのエネルギーリターンも悪くなかった。
ソールの押し曲げの反発よりも、「転がり」を作った方が運動エネルギーの保存に優位であり、
よりロスの無い「転がり」を生むために、ヴェイパーフライには地面からのエネルギーリターンロスの少ない、ズームXが使われている。
ズームXの超高発泡が大事。
シューズの反発力よりも、地面とのやり取りが重要。
じゃあ、プレートはどう機能している?
続く。